針箱



これは私がふだん使っている針箱


村岡花子のエッセイ<曲がり角のその先に> を読んでいたらこんなくだりがあった。

《すでに世に亡い息子の小さな衣類を無二の宝物として守ってきた。

その後再び子供を得てから、男の子の衣類を周囲の家々に分け、もう何も残っていないかとおもったら、穴のあいた靴下がでてきた。

あそこの家の子供さんにちょうどいい。だけど、あそこのお母さんはこれを繕っている時間がないだろう。
けど穴のあいたままはかせたら、たちまちダメになってしまう。
糸さえあれば… 糸さえ十分にあれば、手入れをしてあげられるんだけれど、
糸、糸、糸と針…これだけはたくさんほしい。》


私たちも針と糸が大好きなので、針と糸がほしいという気持ち、とてもよくわかる。

これは、戦中か終戦後の話だと思うけど、穴のあいた靴下を繕って近所の子供にあげる時代、今は穴があいていなくても捨ててしまう。

私が実家に帰ったとき、黒く透けるようになったタオルが、洗面所に干してあったので母に「新しいのが沢山あるんだから、このタオル捨てて新しいのに替えようよ」
と言っても決して捨てなかった。  母は穴のあくまで使うんだよと言った。

私はそのとき母の気持ちがわからなかった。

両親も、村岡さんと同じ時代に生きていたのだ。

今頃になってやっと母の気持ちが理解できたような気がする。


母の死後、母が使っていた針箱を貰ってくればよかったと悔やまれる。

針仕事の好きな女性にとって、小さな針箱のなかには色んな思いがつまっている。


針と糸があれば、きっと毎日を退屈しないで過ごせると思う。

A




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Author:管理人
Y・・・・江上芳子
桑沢デザイン研究所をへて、
染色から日本刺繍の道へ。
江戸刺繍伝統工芸士
文化服装学園通信講座卒業


A ・・・・奥下朝子
桑沢デザイン研究所(ビジュアルデザイン科)を通り抜け
染色の道へゆくも挫折
イラストレーター
日本ヴォーグ 学園手編み講師養成講座卒業、
手編み指導員 手編み講師 資格取得


http://futago.cart.fc2.com/


店主 江上芳子 奥下朝子

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